主人公、樋口新平は創作を愛する高校2年生。
彼が所属する文芸部は部員が5人しかおらず、廃部の危機にあった。
そんなある日。
同じく文芸部員であるタツが、こんなことを言い出した。
「今度の文化祭、皆でノベルゲームを作らないか?」
その日から、文芸部の慌ただしい毎日が始まった。
ゲーム制作を通して深まっていく5人の絆。
時に激しくぶつかり合う創作への情熱。
そして、ひそかに変わっていくそれぞれへの思い……。
夏の終わりに、彼らは何を見るのか。
そして、彼らのノベルゲームは無事に完成するのか。 (ノベルゲームコレクションより)
ノベルゲーム作りは初めてではないものの、部員全員の合作となれば話は別。
手探り状態であるだろうが、こうしてやることを明確にして一つずつクリアしていくので、進行が分かりやすい。部員全員に担当が割り振られ、それをリーダーである新平がサポートする流れであるため、それぞれと適度に関わり、意外な面も垣間見えながら順調に制作は進んでいく。
しかし、新平とタツとの仲違いにより、確実に遅れていく進捗。
こじれにこじれ、ついには埋めることのできない溝となり、学園祭での公開を諦めざるを得ない状況となってしまう。
一時は創作をすることから逃げ、全て無駄だったんだとやけになる。
けれど、昔から考え続け、大切にしてきた物語に。自分自身のかつての想いに。天使のような女の子に救われる。
思い描き続けてきた彼女のようにありたい。
そう思えたからこそ、悪意にも立ち向かうことができ、そして最高の結果が得られた。
総評
合作であるからこその難しさ。
創作とは楽しいことばかりではなく、苦悩や衝突の方が多いのだろう。
清々しい青春もありながらもそういった部分が際立ち、良くも悪くも、感情移入してしまう作品だった。
ただ、BGMで他の作品で聴いたことのあるものがあり、しかもその作品での象徴(タイトル画面で流れる)であるものが。フリーゲームあるある…なのかも知れないけれど、なんとも言えない気持ちになってしまった。
キャラクターはそれぞれキャラが立っていて、この五人だからこその文芸部なんだなぁと感じた。もし個別√がある作品だったなら先輩を攻略して見たかったなと。
欲を言えばサブキャラ、鬼瓦君の立ち絵が欲しかった。
悪役?キャラには立ち絵があったのに…。
総じて、序盤から終盤まで安定して楽しめた。
創作に多くの時間を費やしているであろう作者だからこそ書ける物語。
好きなことに打ち込み、形にできることは本当に素晴らしいことなんだと思わされた。