あらすじ
雨と死と絶望が支配する、滅びの街。
記憶を失くした少年がゴミ捨て場で少女に拾われる。
彼女が与えてくれたものは、温かい食事でも毛布でもない、冷たく重い一丁の銃。
暗殺者として生きる二人だったが、なぜかターゲットは子どもばかり。
やがて矛盾と狂気が渦巻く真実を知り、二人が向ける銃口の先は運命へと変わってゆく。
戦う少女たちの哀しくも純真な物語。
感想
まずこの作品は、最初から最後まで殺しまくり。
苦手な人は苦手な部分も多いだろうことから無理はしないほうがいいだろう。
記憶がないため、流行りのキネマの登場人物から名前を借り、エルトとエリカと名乗る。
始まりは銃を奪おうとしたスリの少年から、酒場で飲んでいた若者たち。
どんな相手でも、どんな人数でも、二人で標的とされた人物を撃ち殺していく。
生きるためには標的を殺し、その報酬として食事(カプセル状の薬剤)を得る。
そのために、自分を壊し、異常を正常にしていく。
そんな中でも、エルトの優しさに触れ、ほんのわずかばかり残っていた壊れていない部分を刺激され、エリカは普通の女の子のようになっていく。
初めは無感情で淡々としていたヒロインが感情を知り、主人公と共に抗う。
捻りの少ない王道的な物語でもあるのだが、それがまた良かった。
まず舞台が世界大戦後であり、敗戦国である。
貧富の差が激しく、国民のことは省みず、上は次の戦争のことばかり考えている。
人と人が戦う時代が終わり、飛行機や戦車で、簡単に人が殺せる時代へ移り変わってゆく、そんな時に生きる。
だからこそ、何が正しいのか、何を恨めばいいのか分からなくなる。
この物語における登場人物に明確な悪人はいない。
しいて悪だというのなら、そうせざるを得なかった時代、ということだろう。
だれしもが、ただ死にたくない、生きていたいという思いで必死になっている。
自分自身の最期の自由のために、復讐のために。
または故国のために、守るべき人のためにと。
最後まで混迷を極める時代へ向かう中で。
前回の作品感想でも言っていたが、フリーゲームとは思えない出来。
お金払いたい。(これ毎回言うことになってそう)
背景の作りこみや、魅力的なキャラクターたち、(主人公や一部男性キャラ以外はボイスあり)同人にしては多くのCG。
特に声優さんの演技は違和感なく伝わってきた。
というものの、DLsite等で聞いたことのある声優さんの名前が見かけられたのでプレイする前から期待していた。
ただ、モブキャラとメインキャラクターの絵にかなり差があるので並べると変な感じがしてしまった。
音楽については、世界観が終始暗いせいもあり、明るい曲は少ない。
EDも英語の歌詞であったため、最後まであの雰囲気を貫いていて、悪くない読後感だった。
クリア後のおまけでもいろいろと知れたが、まさにやりたいことをやっているという同人ならではのものが随所にある。
EDを迎えた後も状況は何一つ変わらず、決して後味の良い物語ではない。
それでも、最初に描いた自暴自棄な最期ではなく、幸せな最期だったのかもしれない。
そんな、ちょっとした鬱ゲーなのだが、流血や鬱展開に耐性のある人には是非とも勧めたい作品。