初めに
初めましての人は初めまして。
そうでない人はお久しぶりです。
長らく更新のなかったこのブログですが久々に感想を書いていきたいと思います。
時間や熱意のあるときに比べると遅々として進まないプレイ速度……。
役職やら責任とかがなかった頃に戻りたいと思う今日この頃です。
今回プレイしたのはかたわ少女、フリーゲームの一つです。
この作品を知るきっかけはTwitter。
もはや誰のどんなツイートで知ることができたのかは覚えていないのですが、知れて良かったです。
軽く調べると多言語でプレイできたり、またかたわという言葉があまりよくない言葉だということを初めて知ったりで興味を惹かれた。
Twitterには感謝ですね。
あらすじ
主人公である中井久夫は、岩魚子(どうしてそんな名前にしたんだろう?)からの告白を受けたときに発作が起こる。
先天性の心臓疾患だと分かり、長期間の病院生活と山久学園への転校を余儀なくされる。
山久学園ではみんなが特別であり、なんらかの障害を負っている。
四肢の欠損や五感のいずれかの欠如。
多くのものを失ったと感じている久夫が彼ら彼女らと出会い、相手を、そして自分自身を知っていく。
登場人物
中井久夫
長い病院生活と環境の変化により気力が落ち込んでいる。
新しい環境に馴染もうと、自分の居場所を見つけようともがく。
人生、友情、そして未来に対する、自分の無感動な気質を考え直す必要に迫られる。
茨崎笑美
足のない少女ではなく、足がないものの中で最も速いもの。
陽気で楽天的な性格で、久夫を走る事へと引っ張って行く。
止まることを知らない彼女でも心の底で怖がっていることがあった。
砂藤リリー
生まれつき盲目でありながらも、優しく責任感があり、親しみやすい少女。
互いの過去を知ることで、過去を受け入れ、前を向かせてくれた。
手塚琳
重度の先天性障害と、それに伴う手術のため、琳の腕は小さな突起でしかない。そのため彼女は足と、時に口をあらゆる事 ―― 特に絵画 ―― に使う。
独創的であり、琳の考えを理解するのは難しい。
琳の考えていることや感じていることは琳の混乱していることでもあり、自分自身がわからないということでもある。
それでも理解しようとするには言葉を交わすしかない。
羽加道静音
耳が聴こえず、喋ることもできない。
けれども意思が強く、押しが強い。
クラス委員であり生徒会長を務め、久夫を生徒会へと勧誘する。
対等になるため手話を学び、静音の言葉が、仕草がわかる度に新しいものを見つけていく。
池沢華子
幼少時に起きた惨事により、人生が大きく狂わされ、一生消えることのない傷を負った。
極端に一目を避け、遠ざかる華子。
リリーと共に関りを持つが、感じるのは互いの壁。
それでも知ろうとする、少しずつでも。
感想
自己の観察、周りの観察が上手い久夫は読み手が自身を重ねやすい。
それには久夫の障害が一見すると健常者に思えるようなものというのも一因。(実際の心臓疾患の人には悪い気がする言い方だけれど)
普通であったはずが普通でなくなり普通でない人と生活する。
けれどよく観察するとみんな驚くほど普通なんだと気づく。
それは決して障害の克服が主題ではなく、陸上や芸術に関する考えや生き方を見せられ、みんなが未来を見ていることが伝えられている。
何気ない日常の中で、近づいたり、離れたり。
または近づこうとするけれど、どれだけ離れているのか分からなかったり。
派手さはないが、心の距離、心の機微が上手く描かれていたと思う。
またどのルートでも届けられる岩魚子の手紙。
これをどういった心境で受け取るか、どう捉えるのかが微妙に違ってくる。
ヒロインや山久学園という環境が与えた影響がそうさせるのだと思うと興味深かった。
総じて、フリーゲームでもこれだけ質の良い物語があるのだと、多くの人に勧めたい作品。
大きな山や谷があるわけではなく少々退屈に感じるときもあるかも知れないが、得るものはあると思う。
以下OP。