物語
初夏の豪雨の日。
逃げ込んだコンビニで出会ったのは、サバの味噌煮の缶詰を食べる女の子。
彼女のエキセントリックな行動に心を奪われ、再び出会えたとき、なぜサバの味噌煮の缶詰をたべていたのかを質問する。
……終末の準備に缶詰を食べる?
―プレッパーズ。終末を見つめる人々。
プレッパーズとなった少年少女たちが終末に立ち向かう物語。(公式HPから一部抜粋)
まず初めに、この物語は、終末を楽しむ物語であって、実際に終末が起きる訳ではない。なので、終末後の世界を期待してはいけない。(終末に近い展開はあるにはあるが)
そして実質的には個別ルートなしの一本道。よくある途中下車式ともまた違う。大きな物語の中で少しずつ明かされる世界観。攻略する、もしくはされるという風ではないので、好みが分かれるところではないだろうか。
一定のところまで進んだところで突然話がぶつ切りにされ場面が変わる。
最初はついていくのに戸惑うけれど、あ、これはまた世界が改変されたんだなと妙に納得しつつ、物語を追う。
この辺りは、なつくもゆるるに似ている。
物語としての本質はもちろん違う。
読み手の持つ情報が更新され、また一から始まる感じが似ている。
小海雅孝が主人公ではあるが、同時にツバキが主人公のように物語を動かしていた。
誰が格好いい、誰がかわいい、ではなく、次はどんな事実をもたらすのか、どんな展開になるのか。そういった楽しみをくれる存在で、不思議な魅力を持った存在だった。
どこまでも走って行ける、雅孝が。
その背中を押したかったツバキが。
好きだった……。
ただやはりささる人にはささるし、ささらない人にはささらない、そんな作品。
ここでやはり重要なのは体験版なのだろう。(自分は購入確定作品は体験版はプレイせず、迷う作品のみプレイする主義だけれど)
ギャグが自身に合うか、八乙女さんの長い等身を受け入れられるか等々、判断要素は多分にある。
けれど、体験版の引きにあたる部分がなんとも続きが気になる急展開で、このライターさんらしい世界が垣間見える。そして購買意欲向上につながる。こういう構成は上手いなぁと思う。
このライターさんの作品が好きで当然過去作もプレイしているのならば、嬉しい表現も見受けられた。
この場面でははるまで、くるるを思い出し。
この場面ではなつくもゆるるが思い浮かんだ。
音楽に関しては、不穏な雰囲気のするBGMが多い中、日常シーンではプレッパーズの雰囲気を作るヘンテコなBGMが良かった。
キャラクターに関しては、ツバキが好きだが、かわいさという点では、ちっこい後輩の辻花咲がかわいかった!!
一番の常識人ながら、一番素直でいじりがいのあり、好意を向けられるようになってからさらにかわいさに拍車がかかる!!
雅孝を助け、一番ヒロインしたのは彼女だったと個人的に思う。
総じて、簡単には勧められないが、このライターさんの過去作が好きな人に限れば、自信を持って勧められる。
終末ものとして更紗が例として出す作品群に知っているものがあればニヤっとできること間違いなし。
読後感に衝撃や感動はないが、すっきりする締め方。
プレッパーズという世界を知り、その可能性を知れた。