物語
九段朔夜は何時もの帰り道で志摩塔子という女性に出逢い、触れ合う内に仄かな想いを募らせていく。しかし、災厄を予言するクダンを塔子が目にしたことで穏やかな日常は狂いだす。
守り、対抗する手段を得るため、神秘学研究会の戸を叩き、春夏冬小兎と共にクダンのフォークロアへ挑む。
先ず事態の究明にあたり、前提条件として指針とするのが、怪異が引き起こしたものなのか、ヒトが引き起こしたものなのか。
物事を整理し、推理を組み立てる。
事件が収束を見せ、時は移り、夏休み。
吾妻佳恋からのフォークロアにまつわる、ソフトボール部内における相談。
物語における第二のフォークロア。
全てが丸く収まるわけではない。わだかまりが一瞬でほどわることはない。けれど前を向いたことは分かる、新しい関係へと、このことをきっかけになることができた。
そして部活ばかりの日々に嫌気がさしたころ催された夜売百物語。
この夜を契機に関係は変わり、幼い頃から観る悪夢と似通う、小兎が姉と慕っていた女性の転落死事件を追っていくこととなる。
小兎ルートと塔子ルートが存在するが、どちらの展開、見えてくる真実はさして変わりがない。違いはどちらに深く寄り添い、その後を共に過ごしていくかということ。
たとえ傷を負っていたとしても。依存した関係だったとしても。
二人を攻略した後に解放されるトゥルールート。違いは二人どちらともを強く信じ、愛するということ。
佳恋にも事情を話し、四人で事に当たる。その結果、佳恋にしか気づけなかった点により確たる証拠が見つかる。
クダンの正体。そして幼い頃から観る悪夢の正体が明らかになっていく。
これは運命であって運命でない。自分の道に当たり前のように置かれた幸運ではない。
自分が選び、選ばれたことなんだ。
総評
少女+百合+都市伝説。確かに製作者側のやりたいことが詰まった作品だった。
男勝りな主人公に、年上でおしとやかなタイプと、後輩でギャルファッションに身を包むタイプのヒロインによる取り合わせ。
3800円(税別)という値段であるから、ボリューム的に物足らないところもある。けれど、短いながらよくまとまっているといって差し支えないだろうと思う。
楽曲数も少ないのだが、主題歌、ED曲、BGM各種が物語の雰囲気を良く形作っていた。
テキストに関しては、佳かった、識る、等々常用漢字でない表現を多用するので合わない人もいるのではないだろうか。
総じて、百合要素はあるが百合そのものがメインではなく、ミステリーが好きという人には、ボリューム的にも軽く勧めることができる作品。