さて、今回の作品も以前に体験版感想記事を書いているので、そこまでのあらすじ等は割愛。体験版の範囲から知りたい方はこちらへ。捻くれモノの学園青春物語~俺と彼女の裏表~体験版攻略感想
まず初めに言えることは、ボリュームの少なさである。もっといくつか理事長の課すミッションをこなす共通ルートがあると期待していた。けれど、実際はそんなことはなく、テスト問題を盗み見た犯人を捜すミッションが一つあるだけで(大した困難もなく最初にあたった人物が犯人であり拍子抜けだった)、その後合宿と称した旅行、選択肢が一つで分岐。この間1,2時間。個別に入ってからもボリュームの薄さがひびいた。もちろん、ボイスを最後まで聴くか、Hシーンを飛ばすか否か等の個人差はあると思うが。
唯ルート
青春俱楽部では唯一リア充とも呼べる唯。付き合うことになっても、どうしても信じられない、信じ切れない部分があった。リア充が、周りが、敵ばかりだと思ってた。青春俱楽部を唯の本来居るべき場所とは思えず、成績を上げ、解放することが唯のためになると思ってた。
けれど、それは違っていた。リア充だって努力はするし、青春俱楽部はすでに唯の居場所になっていた。
捻くれ続けても、どうにもならない。青春俱楽部に所属することで、少しだけ真っ直ぐになれた。
さやかルート
スケッチブックを使って会話をするコミュ障。最初は意識すらしていなかった。それが部活を通して少しずつ知っていって、それからもっと知りたくなっていた。それが恋心なのだと自覚した。
恋人としての日々を過ごし、彼氏としてもっと知りたいと望むが、そこで明かされる重い過去。それに対し逃げてしまう。いつものように。どうしようもない、わるいことじゃないと言い聞かせて。
言わなくちゃいけない言葉、飲み込んでしまった言葉を言えたとき、これからの思い出を一緒に描いていくことを誓う。10年後でも20年後でも一緒にいることを。
朔夜ルート
恋バナゲロイン。そのトラウマを克服できるよう一緒に過ごすことで、自然とお互いを意識し、惹かれあうように。付き合うようになってから恋人としての甘い日々を過ごしたいが、朔夜の親友京子からは邪魔者扱い。京子は自分本位な考えを押し付けてしまい仲違いをしてしまう。
祐一郎を好きな雫の気持ち、朔夜のことを好きな祐一郎の気持ち、そして祐一郎が好きな朔夜の気持ちを知った。朔夜を本当に好きだから、笑っていて欲しいから、任せることを選ぶ。
つらいこともあったけど、行動しないと何も変わらないと教えられた。迷ったりするかも知れないけど、これからは一緒に歩んでいく。
雫ルート
毒舌ストーカー幼馴染。捻くれモノだからこそ憧れ、好きになった。かつての親友による裏切りによって、人間には裏表があることを知り、そのせいで人間を信じることができなくなった。
祐一郎と向き合い、過去の出来事と向き合うことで、宗像雫は自身で考えているよりもずっと弱くて寂しがり屋で感情的だったことを知る。
新しい一面を知ることは怖いことではなく、楽しいことだと気づけた。だから少しだけ、他人を信じてみよう。
観月ルート
年上のナイチチツルペタロリハリ金髪〇女。人に溶け込み、人心を掌握する、一人の転校生が中心となって騒動が起きる。それは理事長自身の過去、青春俱楽部の発足にも関係する。
体育祭を経て、学生会選挙へ。ここで終わらせられない、終わってたまるかって。そう思うのは惚れた人のため。危機に陥るが、雫の助けもありなし崩し的に学生会長へ。
これは祐一郎の青春でもあり、やり残した観月の青春でもあった。
総評
まず冒頭でも書いたように、ボリューム不足。ただボリューム不足なこと自体が悪いということでもない。一言、足りないと切って捨てるか、短いけれどよくまとまっているかとするか。感じ方は人それぞれだろう。だが今作の場合はやはり前者。もっと丁寧に描いて欲しかった。あるルートではプールで遊んで付き合い始め、それからあっという間にクリスマス。そういうイベント事でしか話を膨らませられないのかと。ミドルプライスだったのなら納得できるのだけど。
そしてサブタイトルの裏表だが、主人公である祐一郎はむしろ裏しかないと評される。他のヒロインも裏があるかというと微妙。むしろ祐一郎の捻くれが生じ、ありもしない裏を探っていっていた気がする。人の裏表について思い悩み、一歩前に進めたと感じる話は雫ルートだけに思えた。ルート毎の出来は雫と観月が同率1位であとは……。
やっぱり個人的には、青春することを目的にクラブ活動をするのではなく、もっと自然にこんな青春を送ってみたかったなと思わせてくれる部活、高校生活を読ませて欲しかった。こんなことを言うとそもそもがこの作品のコンセプトの否定にもつながるかも?
今作の特徴でもある期末試験のクイズや裏暴きも簡単すぎて微妙。むしろ邪魔な要素にすら感じた。クイズはともかく、裏暴きモードでは選択肢が6つあるのだが、そのうち5つはネタで間違いなく不正解だとわかるものであり、考えるまでもなく答えが分かってしまう。
何というか、突き抜けたものがなかった印象。シナリオやキャラクター、ギャグ等。少しくらいは褒めるべきところを上げたいけど、発売前に期待していたものとのこれじゃない感が強いというか……。率直に楽しめなかった。